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| ジェネレーション Yシリーズ:「新たな音楽ディストリビュータ、スターバックス」とブーマーズとの関係(Starbucks-An alternative music distribution for Boomers) *ベイエリア最新事情2005年3月2日* |
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グローバルブランドとしてのStarbucks(スターバックス)
日本に出張して一番感じるのは、スターバックスの店舗数の多さです。この「スターバックスのユビキタス状態」は、常にノンスモーキング・エリアを探している私にとっては、非常にありがたいことで、その便利さを実感しています。さらに、全世界30カ国に9,000店舗を持ち、そのうちの3,000以上の店舗には、ワイヤレス・インターネット・コネクションを設置しているスターバックスは、すでにコーヒーショップというポジショニングから抜け出て、インターネットのユビキタス化を促進するシンボルといった感があります。個人的には、サンフランシスコの地元のコーヒー・リテイラー Peet's Coffee(ピーツコーヒー)を応援している私ですが、このシアトル生まれの巨大なコーヒー・チェーンのブランド力の凄さには脱帽します。 BrandChannel.comによるブランドランキングでは、2003年には10位だったスターバックスは、2004年は一気に4位に急上昇し、iPodブームを反映してトップに立ったアップルに続くブランドとして注目を集めています。1971年シアトルにコーヒーショップ1号店を出して以来、1992年の株式上場時には2億ドル(200億円)の市場価値だったスターバックスは、現在市場価値190億ドル(1兆9,000億円)まで成長し、グローバルブランドとしての地位を確立しました。(円換算:1 ドル=100円)
スターバックスとベビーブーマーズの親密な関係 こうしたユビキタスなスターバックスを支えてきた主要な顧客層は、米国ではベビーブーマーズです。第2次世界大戦後の1946年から1964年の間に生まれた現在40歳から 58歳のこの世代は、世代人口7,800万人という巨大なグループで、現在の米国の社会と経済の牽引者として大きな役割を果たしてきました。スターバックスは、34年前「成長と拡大を求める」このベビーブーマーズ世代に、「カフェラテ」に代表される「新しいコーヒー文化」を紹介しました。34年を経た今、都市部に限らず米国中いたるところで、誰でも、「ハーフカフェインで、ミルクはノンファット、エクストラフォームにして」というスノッブなコーヒーのオーダーが可能になりました。 スターバックスのオルタナティブな音楽ビジネスへのアプローチ このリテイル業界の革新者スターバックスは、コーヒー販売のビジネスの枠を軽々と超え、「Alternative Distribution(オルタナティブなディストリビューション)」として、音楽ビジネスに着目しました。まず最初の試みとしてスターバックスは、5年前にオルタナティブ・レコード・リテイラーのHear Music(ヒアー・ミュージック)を800万ドル(8億円)で買収し、ジャズ、ブルース、オルタナティブ・ロックといった大人向けの音楽を中心とするXMサテライトラジオ局(XM Satellite Radio)をスタートさせました。現在この全米No1のXMサテライトラジオ局の契約者数は300万人を超え、自宅、オフィス、車、さらにオンライン上に、コマーシャルなしで音楽を提供しています。スターバックスは、自社のブランドイメージを表現するこうしたユニークな音楽を店舗内で流し、顧客が気に入ったらその場ですぐにCDが購入できる仕組みをつくり、コーヒービジネスと音楽販売の自然な融合を図っています。この音楽の新しいディストリビュータとしてのスターバックスの動きは、昨年10月に発売されたRay Charles(レイ・チャールズ)のアルバム「Genius Loves Company」のグラミー賞のマルチプル受賞、および300万枚以上のセールスという大成功によって結実しました。 新しい音楽のリテイルショップ スターバックスは、さらに次の音楽への長期的なコミットメントとして、コーヒーを飲みながら、誰でも簡単に自分の好みの曲を選んで、CDが焼けるキオスク「Media Bars (メディアバー)」を設置しはじめました。すでにテキサス州のオースティンに30店舗、ワシントン州のシアトルに15店舗の「 Media Bars 」が設置され、1 曲99セントで、カスタマイズあるいはパッケージされた曲が購入でき、スターバックスカードあるいはクレジットカードで支払う仕組みです。また、この Media Bars のコンセプトをさらに踏み込んだカタチとして、カリフォルニア州のサンタバーバラには、インタラクティブでカスタマイズされた先進的な音楽リテイルショップ「Hear Music Coffeehouse」がオープンしました。ここでは、1万曲以上の音楽ライブラリーから自分の好きな曲を選び、カスタマイズしてCDを制作します。店内では音楽のスペシャリストが、顧客の音楽の新たな興味につながるように音楽推奨のガイドを行い、 CD 制作の技術的なサポートもする新しい音楽のリテイルショップです。 デジタルな音楽接触になじめないブーマーズへの新たな音楽チャネル ジェネレーションYやXというユース世代を中心に、圧倒的な勢いで一般化しているデジタル音楽市場は、アップルのiPodブームに後押しされるように、世界中で急激に成長しています。国際レコード産業連盟 (IFPI) によると、2004年の米国とヨーロッパにおけるダウンロードによる販売曲数は2億曲を突破して、2003 年の約 2,000万曲の10倍となり、市場規模も 3 億 3,000 万ドル( 330 億円)に拡大し、2005年にはさらに倍増すると予測されています。こうした音楽業界のデジタル化の流れに多少抵抗感を持つ世代が、可処分所得も大きく、かつてのミュージックラバー(音楽愛好家)として、潜在的な音楽市場を形成するブーマーズです。ユースマーケットとは異なり、ブーマーズは、Best BuyやTargetのような既存の音楽リテイルショップへなかなか足を運ばす、音楽のダウンロードやCDを焼くといったデジタルな手法による音楽接触になじまない傾向があり、新たな音楽との出会いや発見が得にくい状況になっています。そんな状況下で、スターバックスで「アイスド・モカ」をオーダーしている間に、自分の気に入った曲が買えるという仕組みが、いかにブーマーズの消費者心理と行動にマッチしたかは、「Genius Loves Company」の300万枚のセールスのうち 30%が、スターバックスから生まれたということで証明されました。 Perfect Storm(パーフェクト・ストーム)を完成させたスターバックスのパワー ビルボード誌のシニア・ライターBrian Garrity(ブライアン・ギャラティ)は、「Genius Loves Company」の成功は、以下の要因から「Perfect Storm* (パーフェクトストーム)」状態だったと分析しています。
*Perfect Storm(パーフェクト・ストーム):1991年にニューイングランドを襲ったモンスターストーム。最悪の気象条件が重なり合って出来上がったため、「パーフェクト・ストーム」と呼ばれ、巨大な被害をもたらした。このストームで遭難した人たちのストーリーは、書籍化されベストセラーとなり、2000年には映画化されている。 これに「スターバックスのディストリビューションのパワー」が重なったことによって起きたパーフェクトな成功が「Genius Loves Company」であり、今後音楽とリテイルチェーンの方向性を探る興味深いケーススタディともいえます。 スターバックスが構築する「差別化された音楽のユビキタスな状態」 スターバックスに立ち寄る顧客は毎週3,300万人にのぼり、店内には差別化されたターゲット(特に大人対象)が好む音楽がすでに存在します。この膨大な数の顧客が、実際に店内で音楽を聞くあるいはCDを手に取るという状況は、彼らがすでに財布を開けているだけに、その購買力の大きさには目を見張るものがあります。こうしたリテイルチェーンにおける音楽の露出によるビジネスチャンスは、スターバックスだけに限定された手法というわけではなく、他のスペシャルティグッズのリテイルチェーンも、充分可能性を秘めています。課題は、いかに自社のブランドイメージと音楽がブレンドできるか、さらにそれを活かして差別化された音楽ファンを掘り起こして、彼らとどうやってエンゲージできるかにかかっています。スターバックスはXMサテライトラジオ局によって、店舗内と自宅やオフィス内を音楽で結びつけるチャネルを確立しています。この点に置いても、スターバックスの音楽シーンにおけるオルタナティブなディストリビュータとしての展開は本物で、今後の動きは見逃せません。 |
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大柴ひさみ (Hisami Ohshiba) 1979年外資系広告代理店電通ヤングアンドルビカム(DY & R)に入社、外資系企業の広告マーケティングを16年間担当。1995年にカリフォルニアに移住し、米国大手広告代理店やダイレクトマーケティングの会社勤務などを経た後、1998年2月JaM Japan Marketing(http://www.jamjapan.com/jp/)を設立。2001年1月ビジネス拡大のために、JaM Japan MarketingをLLCとして組織変更する。海外市場進出を目指す日米企業を対象に、クロスカルチャーなナレッジをベースにマーケティング戦略の開発立案、市場調査分析、広告PR、ローカリゼーションを含むコンサルティング活動を提供。講演・執筆活動も多く手がけている。2003年2月初の書籍「ひさみの冒険」がひつじ書房より発行 (http://www.hisami.com)。ご意見・ご質問はhisami@jamjapan.comまで。 |
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